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ブリスベン、オーストラリア

クイーンズランド州の市民は毎年30億本近くの清涼飲料を消費しています。飲料容器のリサイクルは決して難しくありませんが、残念ながら散乱ごみの種類としては州内で2番目に多くなっています。容器預託制度(Container Refund Scheme: CRS)は、製造元が費用を負担することを原則とする環境保護関連法のひとつとして他州に先駆けて成立した制度であり、飲料メーカーは回収された飲料容器に支払う払戻金の原資を調達する義務を負います。

Container Exchange Services(CES)は、この世界的に見ても先進的なリサイクル制度に対応する重要なビジネスシステムとサービスを提供しています。同社が提供するシステムとサービスは、IT、決済サービス、マーケティング、持続可能性、物流、 顧客サービス、資材取引(競売プラットフォーム)など、多岐にわたっています。CES はクライアント各社と共に、リサイクルの拡大、廃棄物の削減、ゴミ埋め立て地の拡大抑制、コミュニティグループや社会事業に携わる組織の機会創出に注力しています。

CESの重要なクライアントであるContainer Exchange(COEX)は、クイーンズランドで展開されるContainers for Changeと題したCRSプログラムの開発、維持、運営を行う組織として、関連企業が共同で設立した非営利団体です。飲料容器を返却すると1本当たり10セントの返金を受けるか、その金額を慈善団体またはコミュニティグループに寄付するプログラムとして立ち上げられたContainers for Changeは、その認知度が急速に広まりつつあります。

「DXCチームは、我々の要件に合ったソリューションの開発に熱心に取り組み、容器預託制度の開始に合わせて期待以上の成果物を提供してくれました」

James Elvin氏 Container Exchange Services ITディレクター

課題

革新的なスタートアップビジネスとして、 CES は事業を運営管理するための包括的なクラウドソリューションを必要としていました。このソリューションはいずれ、クイーンズランド州だけではなく、オーストラリア国内の他の州や海外にも展開することを視野に入れた同社の戦略的ビジョンに合わせて拡張できるように開発しなくてはなりませんでした。しかも、クイーンズランド州政府が CRS を法制化する際に課した厳しい導入期限にも間に合わせる必要がありました。

CES の IT 部門を統括する James Elvin 氏は、次のように述べています。「幸い当社には既存システムがなかったため、クラウドファーストのソリューションをすぐに導入することができました。しかし、各メーカーの特異性を考慮しながら、全メーカー共通の容器代金預託プラットフォームを構築することは大変な作業でした。また、制度の施行初日から、最大330カ所の返却所をネットワークで結ぶという別の難題も克服する必要がありました」

CES は、バックオフィス業務およびクライアントと直接対応するサービスプロバイダーの両方を管理する、広範なソリューション機能を必要としていました。このソリューションは、飲料メーカーから預託金を徴収し、容器返却所(CRP)で回収した容器に対して迅速な返金を行えるようにするもので、さらにライフサイクルの整合性を向上させるために、透明性のある記録管理(COC)も実現する必要がありました。

記録管理は、各容器が小売業者から消費者に渡り、返却所、物流業者、加工業者、リサイクル業者、競売会場の順に運ばれるまでのライフサイクルを網羅しています。

主な機能は以下の通りです。

  • 様々なグループに情報を提供する総合的なウェブサイト、およびオンラインでの参加者登録機能
  • 預託金返金所と支払額の管理
  •  サプライチェーン全体に渡る記録管理
  • 回収された容器の販売管理方法
  • 利害関係者(クイーンズランド州政府、飲料メーカー、サービスプロバイダー、容器返却所の運営者、一般消費者等)への包括的なレポート機能と制度監査機能

「CESのプロジェクトは、現時点でオーストラリアとニュージーランドで展開されている最大の従量課金型ライセンス契約です。これに対応するためには、SaaS 、PaaS 、IaaS の主要機能を組み合わせて、統合ポータル、 POR システム、競売会場を結ぶリサイクル制度固有の IP を提供できるようにする革新的なソリューションを構築しなければなりませんでした」

Richard James氏 DXC Red Rockプラクティスディレクター

ソリューション

コアビジネスプロセスを処理するための最新のデジタルプラットフォームを設計、構築、実装するソリューションを探していたCESは、厳格な購買プロセスを通じて、世界をリードする OracleのSaaS、PaaS、IaaSテクノロジーを組み合わせたクラウドベースの経理・財務・ ERPソリューションとして開発されたDXC Technology の Practice for Oracleを選定しました。

Elvin 氏はこの選考の経緯について次のように述べています。「DXC を選んだのは、熱心に対応してくれる非常に有能な人材が揃っており、私たちが使用したいと考えていた Oracle 製品全般にわたって豊富な専門知識を有していたからです」

このフルクラウドソリューションは、返却される容器の確認、受け取り、集約、移動から、事業体とプログラムに参画する一般消費者間の支払い、容器素材の競売、記録管理、データ管理、CESと容器預託制度コーディネーターの財務会計や財務計画策定をサポートするビジネスプロセスをすべてカバーするように開発されました。

このソリューションには、世界をリードする Oracle Cloud ERP 、顧客関係管理(CRM)とアナリティクス、複数の B2Bと B2C ポータル、IDとアクセス管理、レポーティングプラットフォーム、ポイントオブリターン(POR)ソリューション、 330箇所の容器返却所(CRP)のカスタム支払いエンジン、そして PaaS を使用して構築されたカスタム競売サイトが統合されています。

Oracle のクラウドソリューションは、高品質で耐障害性に優れたパフォーマンスの高いソリューションを提供し、 COEX の戦略的な拡張ビジョンを容易に満たすことができると同時に、より適切な意思決定、コスト管理、パフォーマンスの向上を可能にします。また、モジュール型アーキテクチャーにより、最高クラスのコンポーネントの統合と保守がより容易になっています。

「幸い当社には既存システムがなかったため、クラウドファーストのソリューションをすぐに導入することができました。しかし、各メーカーの特異性を考慮しながら、全メーカー共通の容器代金預託プラットフォームを構築することは大変な作業でした。また、制度の施行初日から、最大330カ所の返却所をネットワークで結ぶという別の難題も克服する必要がありました」

James Elvin氏 Container Exchange Services ITディレクター

DXCが選ばれた理由

Elvin 氏はDXCについて次のように語っています。「比較対象となる同等のプラットフォームがこれまで構築されておらず、未知の領域に踏み出すことになりました。そのため、要件と設計内容を細部まで明確化するのが困難でした。DXC は、ダイナミックな技術領域におけるリーダーシップを発揮し、Oracle製品全般にわたって幅広い専門知識を提供してくれました。そのおかげで、素晴らしいソリューションを導入することができました」

CES と緊密に連携を取りながら、この業界特有の要件について理解を深めたDXCは、ロードマップ策定からプロジェクトの対象範囲の設定、実装および変更管理にまで至るプロセス全体を管理しました。また、DXCのEclipse Enterprise Platforms チームは、すべての回収取引を管理する POR ソリューションの実装にも取り組みました。

最大の課題は、個別の回収取引を 3 秒未満で完了できるようにすることでした。また、その他にも広範なネットワークアクセスを管理する中で、クイーンズランド州北部にある数百のサイトで発生したアクセス不能状態も無事に解決することができました。

 

結果

DXC は、クイーンズランド州の すべてのCRS関係者の特殊でビジネスクリティカルな要件に対応するために、世界をリードする Oracle の SaaS 、 PaaS 、 IaaS テクノロジーを活用した最新かつクラウドベースのデジタルソリューションを提供しました。その結果、CESでは、すべての部署のバックオフィス業務や顧客対応要件を満たした状態で、 CRS 全体を管理できるようになりました。

Elvin 氏はこの結果について次のように語っています。「 CES は、ニーズを満たすクラウドプラットフォームを構築するために多大な投資をしました。DXC は、幅広い製品知識、強力なデリバリーネットワークとサポートチームを継続的に活用して、堅牢で革新的な高品質のソリューションを提供してくれました」

「比較対象となる同等のプラットフォームがこれまで構築されておらず、未知の領域に踏み出すことになりました。そのため、要件と設計内容を細部まで明確化するのが困難でした。DXC Red Rockは、ダイナミックな技術領域におけるリーダーシップを発揮し、Oracle製品全般にわたって幅広い専門知識を提供してくれました。そのおかげで、素晴らしいソリューションを導入することができました」

Richard James氏 DXC Red Rock プラクティスディレクター

DXC Red Rock プラクティスディレクターのRichard James は、今回導入したDXC Practice for Oracleについて次のように述べています。「 CESのプロジェクトは、現時点でオーストラリアとニュージーランドで展開されている最大の従量課金ライセンス契約です。これに対応するためには、SaaS 、PaaS とIaaS の主要機能を組み合わせて、統合ポータル、 POR システムと競売会場を結ぶリサイクル制度固有の IP を提供できるようにする革新的なソリューションを構築しなければなりませんでした」

目的に合わせて開発されたクラウドソリューションは、高い可用性、耐障害性、信頼性、パフォーマンス、セキュリティ、 適時性、拡張性、および正確性を提供できるように構築されました。また、メーカーの請求書発行を容易にするために、過去の傾向に基づいて予測や予算編成などのミッションクリティカルな分析を簡単に実行できる機能も備わっています。

DXC の堅牢なデリバリー計画は、クイーンズランド州政府が定めていた制度の運用開始時期に合わせて設定された厳しい納期にも無事対応することができました。「DXCチームは、我々の要件に合ったソリューションの開発に熱心に取り組み、容器預託制度の開始に合わせて期待以上の成果物を提供してくれました」とElvin 氏は述べています。

 

メリット

リサイクル制度は、地域社会や環境にとって非常に有益です。今回導入したソリューションのメリットは多岐にわたっており、社会事業に携わる組織の活動、慈善団体やコミュニティグループへの寄付、リサイクル事業の推進やリサイクル意識の向上といった戦略的目標の達成を通じて、地域全体にポジティブな効果をもたらしています。

Containers for Changeの運用が始まって以来、クイーンズランド州では330カ所以上に容器返却所(CRP)が展開され、25億本近くの飲料容器がリサイクルされました。金額に換算すると、約2.5億豪州ドルが一般消費者、コミュニティグループや慈善団体に返金されていることになります。

今では約 3,600 のコミュニティグループと慈善団体がこの制度に参画するようになり、700人分以上の新規雇用が創出されています。かつて国内で最も低い水準であったクイーンズランド州のプラスチックとアルミニウムのリサイクル率はこの5年間で35 %(2015年)から  55 %(2020年)にまで上昇しています。

 

今後

DXCは継続的なシステムサポートと管理というより成熟したサービス提供に移行しており、CESとDXCのパートナーシップは益々強固なものとなっています。

Elvin氏は次のように結論付けています。「このプロジェクトの成功により、クイーンズランド州は、制度導入の最初の3年間でリサイクル率を85%にまで引き上げ、国内トップクラスの水準を達成できる見込みです。

DXC は、すべての機能要件に対応した強固なデジタル基盤を構築してくれました。また同時に、この制度をクイーンズランド州だけではなく、オーストラリア国内の他の州や海外にも展開することを視野に入れた当社の戦略的ビジョンに合わせて拡張できるようにも開発してくれています」

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