ロッテが、全社およそ2,500台が稼働する仮想デスクトップ(VDI)環境のクラウド移行を進めている。グループ3社の経営統合を経て、カスタマーエクスペリエンス(CX)の更なる向上を目指し、デジタル変革(DX)に取り組むロッテが掲げるICT 戦略の一つは「クラウドファースト」である。DXCテクノロジーは、ロッテの中期ICT 戦略の具現化を支援する一環として、オンプレミスVDI環境のVMware Cloud™ on AWSへの移行プロジェクトをリード。グローバルチームによる強力な支援体制を確立し、VMware Cloud on AWS上でのVMware Horizonの構築から運用、サポートデスクまでトータルなサービスを提供している。
「クラウドVDI環境では短期間でリソースを拡充できるようになり、コロナ禍でのテレワーク推進にも迅速に応えることができています」
クラウドファーストを掲げた変革へのチャレンジ
日本を代表する菓子メーカーであるロッテが、全社を挙げたデジタル変革(DX)への取り組みを加速させている。見据えているのは、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上と収益拡大という成長戦略の推進である。同社では2019年に中期ICT戦略を策定し、その中の一つのテーマとして「クラウドファースト」を掲げて全社システムのクラウドサービスへの移行を進めている。ICT戦略部部長の緒方久朗氏はその狙いを次のように話す。
「ロッテでは、全社レベルで意思決定とビジネスのスピードを高め、部門の垣根を越えたコミュニケーションを進めながら、デジタルテクノロジーを活用した新しい価値の創造にチャレンジしています。一方で、お客様ニーズや市場環境など、ビジネスの現場ではさまざまな変化が起こっています。DXを推進するための基盤整備として、また、これからの『予測できない変化』に適応していくためのビジネス基盤を実現するためにも、大胆なクラウドシフトが不可欠と考えました」
2018年、ロッテ、ロッテ商事、ロッテアイスの3社が統合し、新生ロッテが誕生した。製販が統合されたビジネスプロセスを支える基幹システムにはSAP S/4HANAが採用され、これもクラウド上で稼働させている。同時期にグループウェアもGoogleWorkspaceへ移行した。
「クラウドシフトによってインフラの保守・運用にかかる工数を削減し、私たちICT戦略部自身がDX 推進の原動力にならなければならない、という意識が強くありました。バックエンドシステムとエンドユーザー環境の両輪で、クラウドシフトをさらに推進していきます。オンプレミスVDI環境のクラウド移行を決断したのも、この取り組みの一環です」(緒方氏)
現在ロッテでは、およそ2,500台が稼働するVDI環境のVMware Cloud on AWSへの移行を進めており、2021年7月に全デバイスの移行を完了させる計画だ。VMware Cloud on AWSはVMware社が提供するクラウドサービスであり、AWS 上のベアメタルリソースを利用してVMware vSphere環境を利用可能にする。
「Windows 10導入のタイミングに合わせて、第1期およそ1,000台をVMware Cloud on AWS上に移行しました。移行プロジェクトは、DXCのグローバルチームから全面的なサポートを受けています」(緒方氏)
グローバルな知見を活かしたVDIのクラウド移行
ロッテがVMware HorizonによるVDIを最初に導入したのは2011年。以来VDIは、ロッテのITガバナンスと事業継続性の強化を担い、場所を選ばない柔軟な働き方を支え続けてきた。2016年のインフラ更新を経て、次期VDIの検討が始まったのは2019年のことだ。トリガーとなったのはWindows 7のサポート終了である。
「Windows 10へ移行するにはVDI基盤のリソース増強が不可欠でした。私たちは、先行して1,000台をクラウドVDI上のWindows 10環境へ移行し、オンプレミスのリソースを確保した上で残る1,500台分のOSアップグレードを行う計画を策定しました」と緒方氏は話す。
「DXCテクノロジーは、グローバルから経験豊富な技術者を選りすぐってチームを編成してくれました」
緒方 久朗 氏 株式会社ロッテ ICT戦略部 部長
DXCテクノロジーの提案は、「第1期のクラウド移行は1,000台に限定し、残る1,500台はインフラ機器の保守が切れるまでオンプレミスで使い続ける」というものだった。この“ハイブリッド方式”であれば、クラウドとオンプレミス双方でWindows 10に十分なリソースを割り当てながら移行を進めることが可能だ。VMware Cloud on AWS上のVDI 基盤には、オンプレミスと共通のVMware Horizonが採用された。
「私たちが検討を開始した2019年の時点では、VMware Cloud on AWS上にVMware Horizonを構築する事例は国内では公開されていませんでした。DXCテクノロジーは、グローバルから経験豊富な技術者を選りすぐってチームを編成してくれました。私たちは、仕様上の制約などパブリッククラウドならではの問題を一つひとつ解決しながら、着実に構築・移行を進めていきました」(緒方氏)
DXCテクノロジーは、世界70か国に拠点を持つ世界最大級のITサービスカンパニーであり、その強みはテクノロジー人材とナレッジに代表される豊富なグローバルリソースにある。本プロジェクトには、DXCテクノロジー・ジャパンを軸に、米国・欧州・アジアから高いスキルを備えたメンバーがアサインされた。
「2019年10月から、アマゾン ウェブ サービス(AWS)、VMware Cloud、Horizonそれぞれの構築を急ピッチで進め、2020年に入ってほぼ予定通り1,000ユーザーがクラウド上でVDI環境を利用開始することができました。クラウドVDI環境では短期間でリソースを拡充できるようになり、コロナ禍でのテレワーク推進にも迅速に応えることができています」(緒方氏)
ベネフィット
中期ICT戦略を具体化するアドバイザリサービス
DXCテクノロジーは、VDIのクラウド移行に先立って、ロッテの中期ICT 戦略策定を支援するアドバイザリサービスを提供した。クラウドシフトによるアセットレス化/OPEX化、クラウドならではの俊敏性とスケーラビリティの獲得、ハイブリッドインフラ環境のセキュリティ、リフト&シフトからクラウドネイティブ化へのロードマップ策定など、DXCの支援は広範に及んだ。
「2019年から2023年までの中期経営計画に沿ったICT 戦略を具体化するために、DXCのアドバイスを受けました。特にICTインフラとセキュリティに関して、現状把握と将来のあるべき姿を一緒に描いてきた経緯があります。ロードマップにはVMware Cloudの採用やVDI環境のクラウド移行も描かれており、今回のプロジェクトでそれを具現化したとも言えるでしょう」と緒方氏は振り返る。
緒方氏には、「最新のクラウドテクノロジーをいち早く採り入れて、そのメリットを活かしながらビジネスの収益向上に貢献したい」という強い意思があった。そのためのAWSやVMwareの採用であり、DXCテクノロジーをICTパートナーに選んだ理由でもある。
「2019年から2023年までの中期経営計画に沿ったICT戦略を具体化するために、DXCのアドバイスを受けました。特にICTインフラとセキュリティに関して、現状把握と将来のあるべき姿を一緒に描いてきた経緯があります」
緒方 久朗 氏 株式会社ロッテ ICT 戦略部 部長
「デジタル変革(DX)を推進し、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上と収益拡大を目指すための基盤は着実に整いつつあります。製販統合されたビジネスプロセスを活かした、AIによるデータアナリティクスにも着手しました。生産の現場ではスマートファクトリーが変革のテーマに掲げられています」(緒方氏)
“ロッテノベーション”と呼ばれる企業文化は、キシリトールガムやクーリッシュのような独創的なアイデアに溢れた商品を次々と生み出してきた。2018年に創業70年を迎えたロッテの歴史を振り返ると、まさにイノベーションの歴史であることがわかる。緒方氏は次のように話して締めくくった。
「DXは次のイノベーションを生み出すためのチャレンジです。変革への強い意思を全社で共有し、予測できない変化に適応していくために、私たちはクラウドシフトをさらに推進していきます。DXCテクノロジーには、世界最先端の知見を活かして私たちの成長戦略をともに支えてもらえることを期待します」