環境に優しい輸送への需要が高まるなか、CO2排出量ゼロの水素で走る旅客列車を世界で初めて製造したAlstom社は、持続可能な輸送の未来を創造することを目指しており、幅広いモビリティ製品と最新のグローバルIT運用を通じてその目標を達成しつつあります。
パリ郊外に本拠を置くAlstom社は、最高時速320kmの高速鉄道、地下鉄、路面電車から、統合システム、カスタムサービス、インフラストラクチャ、信号、デジタルモビリティソリューションまで、世界中の300を超える都市に総合的な鉄道設備やサービスを提供しています。
Alstom社は、グリーンでスマートなモビリティソリューションの提供に力を注いでおり、70か国7万人の従業員と、外部パートナーとの協力のもとイノベーションを促進しています。同社は、すべての事業部門と250以上の拠点に在籍する従業員に新しいアイデアを共有することを奨励しており、同社のイノベーション戦略を後押しする最も有望なアイデアを見出して育成しています。ITモダナイゼーションは、この変革をサポートするための鍵です。
ビジネスの俊敏性を向上
「ビジネスの俊敏性を高め、将来の成長を見据えた基盤を構築するには、高速で効率的かつ柔軟なインフラストラクチャが必要でした」とAlstom社の最高情報セキュリティ責任者兼テクノロジーバイスプレジデントであるStephane Detruiseux氏は述べています。「当然ながら、パブリッククラウドはこの変革の重要な要素です」
ITアウトソーシングなどの各種サービスを長年にわたってAlstom社に提供しているDXC Technologyは、同社のデジタルトランスフォーメーションの道筋を支援する合理的なパートナーでした。DXCは、Alstom社の全拠点のミッションクリティカルなシステムを24時間365日体制でサポートしています。柔軟性を高めるための重要なステップは、Alstom社のITインフラストラクチャを最新化し、主要なリソースをクラウドに移行することでした。
さらに、データに基づいたインテリジェントな自動化プラットフォームであるDXC Platform Xの導入により、継続的なトランスフォーメーションが促進されています。自動化が進んだことで、Alstom社は高度に仮想化された単一のソリューションにコアストレージ、ネットワーキング、コンピュート機能を統合することができました。さらに、インフラストラクチャの簡素化と自動化の促進という2つの手段により、Alstom社は過去3年間で重大なITインシデントを62%削減できました。
また、「DXCのパートナーネットワークにより、包括的な優れた従量課金モデルが提供されています」と、Alstom社のシニアクラウドアーキテクトであるMehdi Belahcen氏は述べています。「as a Serviceのプライベートクラウドモデルにより、Alstomはインフラストラクチャだけでなく、ソフトウェアとライセンスもas a Serviceで利用できるようになりました。これこそが、私たちのビジネスに柔軟性を与えるために必要なものでした」
Cloud Right™アプローチ
一連のプロジェクトが成功し、Alstom社がMicrosoft Azureパブリッククラウドへの移行を進めるなかで、Alstom社とDXCの信頼関係と協力関係はさらに強化されました。これまでにDXCは1,000台以上の仮想マシンを無停止でMicrosoft Azureに移行するとともに、Alstom社のコンピュート、ストレージ、データベース、セキュリティ、SAPインフラストラクチャの運用サポートを継続しています。
DXCは、Cloud Right™アプローチによって明確なクラウド戦略を策定し、柔軟で効率的なインフラストラクチャを実装しました。その際DXCは、Alstom社が適切なプラットフォームとテクノロジーに適切なタイミングで投資を行えるように支援することを重視しました。
DXCは、個々のビジネスケースに基づいて、一部のワークロードをパブリッククラウドに移行し、その他のワークロードはオンプレミスに残すようにAlstom社にアドバイスしました。たとえば、Alstom社はデータ保護とコスト管理の観点から、一部の拠点で重要なオンプレミスインフラストラクチャを保持しました。DXCは、業界をリードする優れたツールとアジャイルなベストプラクティスを用いて、Alstom社のビジネスアプリケーションを移行して最新化しました。
「DXCのCloud Rightアプローチにより、最も効果的に機能して、最もコスト効率の高いソリューションを選択できます」と、Detruiseux氏は評価しています。
実績
ワークプレイスで仮想コラボレーションを実現
新型コロナウイルス (COVID-19) のパンデミックの際、Alstom社では数千人もの従業員が在宅で勤務せざるを得なくなり、業務の柔軟性を高めることが不可欠になりました。DXCは、Citrixベースの仮想デスクトップインフラストラクチャとMicrosoft Azureがサポートする「いつでも、どこでも、どのデバイスでも」戦略の実装を主導しました。
これにより、ヨーロッパの各所でロックダウンが開始された際、Alstom社の従業員は在宅で勤務しながらMicrosoft Office 365とTeamsを利用して連携し、ファイルにアクセスしたり、データを共有しながらリモートで共同作業を進めたりすることができました。イノベーションの促進を目指す同社にとって、設計チーム間の共同作業は極めて重要であるため、DXCはわずか数週間で、2,000人のAlstom社のエンジニアの仮想作業環境への移行を円滑に進めました。
「目標は、エンジニアの自宅にある一般的なノートPCからであってもエンジニアリングアプリケーションにリモートで接続し、負荷の高いソフトウェアを利用できるようにすることでした。そのために、このソフトウェアはすべてのレンダリングの処理をクラウド内の仮想マシンで実行します」とDetruiseux氏は述べています。
最新のインフラストラクチャと柔軟なクラウド環境により、複雑な設計イメージをAlstom社のラボで直接デモンストレーションするのではなく、バーチャルで共有できるようになりました。Alstom社はリモート3Dシミュレーションを活用し、同社の最新のイノベーションと持続可能なソリューションを顧客と共有できるようになりました。
「今回の危機における取り組みは、不確実な世界でデジタルトランスフォーメーションを推進しているグローバル企業にとって、明確なクラウド戦略がいかに有用であるかを示しています」とDetruiseux氏は言います。「このようなデジタルの機敏な力がなければ、こうした前例のない状況に立ち向かうことは不可能だったでしょう」
この柔軟性により、Alstom社の従業員はハイブリッド勤務モデルを利用できるようになり、週ごとに自宅と職場の両方で勤務しています。これによりAlstom社は、同社のビジョンであるイノベーションと創造性を実現するオープンなエコシステムの促進を継続し、スマートでグリーンな輸送ソリューションの提供において価値の創造とリーダーシップの拡大を続けることが可能になります。
パートナーシップの力
Alstom社は、DXCが提供するフルスタックのサービスと、業界をリードするテクノロジーパートナーの大規模なネットワークを活用しました。ベンダー非依存のシステムインテグレーターであるDXCは、さまざまな利害関係者との完全なエコシステムの維持を目指すAlstom社の企業目標に従い、利用できる最高のテクノロジーを活用して、同社に適したソリューションを実装しました。
たとえば、DXCは鉄道輸送管理システムを構築するAlstom Digital Mobility (ADM) 部門と協力してアムステルダム市の公共交通網のデジタルクローンを作成し、同社の交通管理システムの実現性を実証しました。これにより、Alstom社はわずか数週間で同システムの信号制御とマルチモーダル輸送のパフォーマンスを最適化することができました。この取り組みの鍵は、Alstom社のプライベートクラウドでホストされる3,000台を超えるサーバーで構成されたハイパーコンバージドプラットフォームです。
サステナビリティのリーダーへの軌道に乗って
ビジネスの柔軟性の向上とコラボレーションの重視は、イノベーションを競争上の強みとして活用し、モビリティの持続可能性の分野でグローバルリーダーとしての地位を維持することを目指すAlstom社の目的に合致しています。
「柔軟性の向上によって、ビジネスの市場投入までの期間を大きく短縮できます」とBelahcen氏は語り、さらにこう続けます。「ビジネスの市場投入までの期間を短縮することで、他の事業部門に大幅なコスト削減がもたらされます」
Alstom社がDXCとともに成功させた変革は、相互の信頼関係と柔軟性によって促進されている面もあり、これも継続的なイノベーションにつながっています。DXCはこの取り組みに対して将来を見越した積極的なアプローチを取り、Alstom社のように、限界に挑むことを恐れません。
「私たちはDXCとともに、常に革新的な最新のものを提供しています」とDetruiseux氏。「DXCは絶えず私たちとともにいて、試行錯誤しながら新たな取り組みに挑戦しています」