標準化された輸送コンテナと追跡システムが、企業の物資輸送の方法に革命をもたらした。コンテナ輸送のイノベーターでありリーダーであるオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)社は、デジタルテクノロジー、パブリッククラウド、そして統合データプラットフォームを活用して、自社の変革に向けた航海に乗り出した。
輸送業界の新たなリーダーのための統合デジタルプラットフォーム
シンガポールを拠点とするONE社は世界最大級のコンテナ輸送会社であり、日本の海運会社の川崎汽船(K-Line)、商船三井(MOL)、日本郵船(NYK)の3社によって設立された。同社では210隻を超える船舶を保有し(世界第6位)、そのサービスネットワークは120カ国以上に及ぶ。
DXC Technologyでは、新会社の創業に向けて48カ国の会計事務所にSAPが導入された2018年以来、ONE社の技術ニーズをサポートし、システムを運用するためのマネージドサービスの提供を続けている。
ONE社のSAPシステムは、同社のコンテナターミナルの業務システムであるOpusと統合されており、53カ国、14,000社の顧客との取引を毎日処理している。
Google CloudでSAPワークロードを統合
ONE社は、2020年にDXCの支援により、社内のSAPワークロードを統合してGoogle Cloudに移行した。社内にはSAPインスタンスが2つが存在していた。1つはグローバル本社用、もう1つは各地域の会計処理用だ。後者は従来型のクラウドプラットフォーム上に、各国でローカルにホストされていた。
ローカルの会計システムとグローバル本社のオンプレミスS/4HANAシステムを統合して、全社的な財務データをリアルタイムで確認できる統合ビューを実現するのは容易ではなかった。また同時に、同社はパブリッククラウドに移行することにより、運用効率とスケーラビリティの向上も目指していた。
データ駆動型企業
SAPシステムをGoogle Cloudに移行することは、全社にまたがる大規模なモダナイゼーションの取り組みの一環となった。
ONE社でビジネスプロセスおよびIT担当副ゼネラルマネージャーを務めるAlan Sze氏は「当社では、ミッションクリティカルなアプリケーションをクラウドプラットフォームに移行し、運用効率の向上、市場の需要変化に合わせたスケールアップとスケールダウン、データ駆動型企業になるという目標の推進を目指していました」と話す。
ONE社では、オフィスの生産性向上のためのアプリケーションとしてGoogleのG-Suiteを使用して標準化を進めていたため、Google Cloudは当然の選択となった。
提供された価値
Google CloudでSAPを運用することのもう1つの大きな利点として、Sze氏はビジネス継続性を挙げている。99.99%の可用性とサイト間のフェイルオーバーを備えた非常に堅牢なプラットフォームにより、災害発生時でも会計処理を継続できるからだ。Google Cloud向けのDXCのマネージドサービスでは、システムソフトウェア、インフラストラクチャ構成、サービスコンサンプションをバックグラウンドで管理し、日常業務をサポートしている。
すべての主要システムがGoogle Cloudに統合されたため、統合データにより解析とレポートが改善され、より完全な最新の情報に基づいて、迅速に経営判断を下すことも可能だ。
この目的を達成するために、DXCではサードパーティベンダーと連携して、ONE社のレガシーデータ環境をモダナイズし、GoogleのクラウドベースのデータウェアハウスBigQueryをベースにデータレイクを構築するなどの支援を行っている。両社が連携して、SAPの財務データとOpusシステムの業務データをつなぐことで、ONE社では新興市場の需要や、期日までに支払う可能性が高い顧客のデータパターンなどをすぐに確認できるようになり、港からの迅速な貨物輸送が可能になっている。
「当社の目標に沿った形で、Google Cloud上でのSAPの実装を支援してくれるパートナーを必要としていました。DXCは、移行によって達成できるコスト削減のビジネスケースを作成し、適切なインフラストラクチャの設定、サーバー容量、移行計画などの詳細についてアドバイスしてくれました」
Alan Sze氏
ONE社ビジネスプロセスおよびIT担当副ゼネラルマネージャー
クラウドへの迅速な移行
DXCは、計画からテスト、本稼動まで、ONE社のGoogle CloudへのSAPワークロードの移行をダウンタイムなしで実行した。
移行は、開発環境の構築から最終的な本稼動までわずか12週間で完了した。DXCは、「ビッグバン(一括導入型)」アプローチではなく、2つのフェーズでプロジェクトを実行した。最初に、グローバル本社のSAPシステムをオンプレミスからクラウドに移行し、次に最初のフェーズで得た教訓を活かして、ローカルのSAP会計処理システムを効率的に移行した。
HRプロセスの標準化
ONE社のデジタル戦略の主要な目標の1つとして、社内のHRプロセスの変革がある。従業員エクスペリエンスの改善、従業員によるセルフサービスの実施、パフォーマンスの向上、エンドツーエンドの統合プロセス管理の実現などを目指している。
DXCではSuccessFactors HRソフトウェアもサポートしていることから、ONE社は、SuccessFactorsの追加モジュールを導入してすべてのHR機能を統合管理する取り組みにおいても、DXCをパートナーとした。DXCは、ONE社の従業員がどこで仕事をしていてもつながりを感じ、支えられ、信頼されていると感じることができるように、同社の報酬管理、パフォーマンス管理、目標設定のプロセスの改善を支援している。
「当社では、採用とオンボーディング、パフォーマンス管理、報酬、研修と能力開発、後継者育成計画など、すべてを1つのシステムに統合して、HRプロセスを標準化したいと考えていました。人材は当社の最大の資産の1つであるため、これは当社にとって重要な取り組みです」とSze氏は話している。
S/4HANAによるモダナイゼーション
DXCでは、すべてのSAPインスタンスを最新バージョンのS/4HANAに移行することで、ONE社の価値向上に向けた取り組みもサポートしている。ONE社は、さらに機能をSAPに移行して、リスク管理と不正防止のプログラムを強化することも検討している。
DXCは、ONE社が新しい環境やプラットフォームを導入した際に、規定されているGoogle Cloudのセキュリティフレームワークとガイドラインに従って運用を開始できるようにしている。これはアプリケーションとインフラストラクチャの両方のレイヤーで適切に管理されるが、システムが1つのプラットフォームに統合されたことで容易に行えるようになった。
「大規模なグローバルサービスプロバイダであるDXCが、リソースを適切に配置して、必要に応じてローカルでサポートしてくれました」
Alan Sze氏
ONE社ビジネスプロセスおよびIT担当副ゼネラルマネージャー
グローバルパートナーシップ
Sze氏は次のように説明している。「DXCは、当社のグローバルビジネスのニーズに対応し、起こり得る問題について責任を持って解決することができる、信頼できるパートナーです。ONE社の設立初日の本稼働開始の時も、北米の新しい子会社を1~2カ月で立ち上げるという時も、DXCは当社の目標達成のための方法を常に追求してくれました」
さらに次のようにSze氏は話す。「大規模なグローバルサービスプロバイダであるDXCが、リソースを適切に配置して、必要に応じてローカルでサポートしてくれました。また、DXCは地域の規制要件や税法などについても深く理解しています。DXCは当社の他のパートナーとすでに関係があることが多く、そうしたパートナーとの調整を支援したり、新たなパートナーを迎え入れたりして、当社が目標を達成できるよう支援してくれます」