※本著は英語で執筆された原著( If you don’t have a Generative AI strategy, it’s time to get one )を翻訳したものです。生成AIを含むAIの利用に関する法規制は国や地域によって異なります。

 

生成AI(Generative AI) について取り組むときが来ています。その理由は、競合他社はすでに生成AIを利用しているか、まもなく利用を開始する可能性が高いからです。

その根拠として、たとえば、Scale AIが最近実施した調査では、ビジネスリーダーの大多数が、生成AIをすでに運用しているか、近々生成AIの導入またはテストを予定していると回答していることが挙げられます。

また、生成AIを使用するソフトウェアであるChatGPTが急速に普及していることも考えてみてください。発表後わずか1週間で100万人を超えるユーザーを獲得したChatGPTは、発表以来1億人以上のユーザーを魅了し、毎日約1,000万件の質問に回答しています。この数字には、もちろんビジネス目的以外で使用するユーザーも含まれているものの、生成AIに対する高い関心があることを示しています。ChatGPTの登場で、市場シェアを奪い合う競合他社や、自社製品への組み込みに向けて機能のテストを急ぐ協力会社も現れています。

業務とテクノロジーの双方で大きく進歩

生成AI関連の動きが、このように突然盛り上がった背景とは何でしょうか。主な要因の1つは、ロボットによるプロセス自動化 (RPA) やコンピュータービジョンなどでAIの機能を活用してきた経験を踏まえて、生成AIが大きなビジネスメリットをもたらすと企業が期待していることです。こうした企業はこれまでにAIの活用を通して、サプライチェーン管理からマーケティング、販売に至るまで、あらゆる部分で売上の増加とコストの削減を実現してきました。AIは、コラボレーションの強化、貴重なインサイトの発見、製品、プログラム、サービスなどの改善にも役立っています。

最新の生成AIは驚くほど高機能であり、急激に成熟もしてきています。

生成AIには、基本的なコンセプトが2つあります。1つ目は、既存のコンテンツからパターンと構造を学習する能力です。2つ目は、学習した内容を利用してまったく新しいコンテンツを生成する能力です。生成されるコンテンツには、文章、動画、画像、音声、プログラムコードなどがあります。

たとえば、開発者のOpenAIが公開した最新版のGPT-4は、クリエイティブな作業と技術的な作業の両方で生成し、ユーザーとのやり取りや編集ができます。GPT-4の機能拡充により、さまざまなユーザーがGPT-4を採用するようになりました。言語教育アプリケーションのDuolingoや、モルガン・スタンレーの資産管理サービス、さらにはアイスランド政府もGPT-4を採用しています。

生成AIを今すぐ利用する方法

今や生成AIは大きな進歩を遂げており、傍観している時間はありません。事実、企業や組織が今、生成AIを活用して実現できることはたくさんあります。

  • 生成AIを利用して、文章、画像、音声、動画、プログラムコードなどのまったく新しいコンテンツを作成できます。
  • 生成AIを広報およびマーケティング、創薬、知識管理、人事、コンピュータープログラミングなどに活用できます。すでにメディア・エンタテイメント、製造、ファッション、金融サービスなどの業界で生成AIが利用されています。
  • 業務における大きな便益を得ることができます。Scale AIの調査では、従来型AIの便益には、顧客サービスの改善 (61%が回答)、業務効率の向上 (56%)、収益性の向上 (50%)、新製品の機能開発 (49%) があるとしています。お客様の組織においてもこうした便益を実現できます。

責任あるAIの必要性

一方で、生成AIの利用には、倫理、法規制の順守、セキュリティなどに関する深刻な課題と懸念が生じていることも事実です。現在、生成AIの利用制限や、ユーザーのプライバシーやセキュリティの保護に関する規制はほとんどありませんが、この状況はまもなく変わるでしょう

その他の懸念としては、偏った入力データの可能性、価値観の多様性の欠如、機密データや個人データの漏えい、知的財産の盗難などがあります。さらに、AIのトレーニングデータでは正当化されないはずの虚偽や誤解を招くコンテンツを作成する、「幻覚(hallucination)」と呼ばれる現象についての懸念もあります。

ただし、適切な予防措置を講じれば、多くの課題や懸念を軽減し、たとえ試験的であったとしても、傍観者に留まらずに生成AIの利用に向けて踏み出すことができます。

現在、企業や組織が必要としているのは、責任あるAIに導くアプローチであり、これには次の6つの重要なタスクがあります。

 

  • 適切な利用方法とガバナンスポリシーを定義する。従業員向けに明確なガイドラインを策定し、生成AIの利用時に許容されること、許容されないことを周知します。
  • 組織の体制を整えて説明責任を確保する。これには、AI監視委員会やガバナンスオフィスの設置が必要になる可能性があります。また、生成AIかどうかにかかわらず、AI全般の利用に関する懸念事項のエスカレーションと解決のためのプロセス策定も必要です。
  • リスクと課題を軽減して、レジリエンスと対応策を強化する。自社以上に自社のビジネスを知る組織はありません。その知識を応用して、生成AIが自社の業務で悪用される危険性について概要をまとめます。次に、予防措置を講じて、想定する悪用を防止するか、悪用された場合にアラートが発せられるようにします。
  • 生成AIモデルにつきもののバイアスを認識して修正する。生成AIは既存のコンテンツから学習するため、学習するコンテンツにバイアスが含まれていないかを確認する必要があります。次に、バイアスを修正するための対策をできる限り行います。
  • 人による監視とフィードバックのチャネルを作成する。生成AIは高度な知性を持っているように見えるかもしれませんが、結局のところ単なるコンピュータープログラムにすぎません。生成AIを安全・安心かつ建設的に利用するためには、依然として人間の監視下でAIを設計、組み込み、実装する必要があります。
  • 透明性を確保する。生成AIプロジェクトに関する情報を組織内で広くオープンに共有するとともに、プロジェクトの目標を明確に説明します。加えて、セキュリティの確保や、バイアスの解消のために講じられている措置について詳しく説明します。また、可能な限り関係者との質疑応答が行えるようにします。

どう始めるか

生成AIについて取り組みを始める準備はできたとしても、その方法についてはどうでしょうか。まずは、次の4つのステップから始めてみてください。

  • AI評議会などのAIガバナンス組織を設置する。この組織には、AIの専門家だけでなく、法務、倫理、セキュリティに詳しいスタッフもメンバーとして参加させてください。取締役会レベルの関与も重要です。
  • AIを安全に利用するためのAIポリシーとガイドラインを作成する。制限しすぎず、かつ組織の安全を守るのに十分堅牢な、適切なバランスを取って作成します。
  • AIテクノロジーがビジネスや職務に与える可能性のある影響について、オープンに議論する。現在、人が行っている作業のうち、近い将来、生成AIを使って強化できる可能性のある作業と、そうでない作業について説明します。また、生成AIが人間に取って代わる可能性のある仕事があるならば、詳しく説明し、影響を受ける人々が新たなトレーニングを受け別の仕事を担当する機会を生み出すための準備があることについても触れます。
  • 全社的な視点で準備を進める。IT部門やエンジニアリング部門だけではなく、一般業務の社員も含めて考える必要があります。

DXCの提供するサポート

お客様の組織が生成AIに関する取り組みのどの段階にあっても、まずはDXCにご相談ください。DXCは、ロードマップや戦略の策定、設計、実装、各業界のビジネスに特化した実用化などのAIサービスをご提供します。

DXCが提供するAIサービスは特定のベンダーに依存しません。私たちは大手テクノロジーベンダーだけでなく、小規模でニッチな企業とも提携しており、最も客観的なアドバイスを自由に提供できる立場にあります。

AIに関するDXCの豊富な経験も大きなメリットとなります。私たちは、オープンソースの初期モデルなど、自然言語処理 (NLP) や初期の基本モデル (大量のデータでトレーニングされたAIシステム) から始まり、AI機能を20年近く開発してきました。これまで、DXCのグローバルAIサービスでは、次のような組織がAIを利用してビジネス成果を実現できるよう支援してきました。

  • アメリカン航空はDXCと協力して、AIと機械学習のメリットを活用することで、航空機の着陸および滑走路到着時刻の予測精度を向上させました。
  • 欧州の大手航空機整備会社はDXCと提携し、AIを利用して、販売見積もりの精度を向上させ、整備、修理、オーバーホール (MRO) サービスを強化しました。

また、DXCはお客様にご提供する支援を、自社組織でも実践しています。私たちは、社内で生成AIの利用に取り組んでおり、AIエンジンの倫理的かつ安全な利用を確保するため、AIの責任ある利用に関する社内ポリシーを策定しました。

お客様の生成AI活用においてDXCが提供するサポートについては、こちらをご覧ください。

 

著者について

Kal Kanev: DXCのグローバルAIプラクティス担当ディレクターであり、地域全体の生成系AIオファリングチームのリーダー。10年以上にわたってこの職務を担うKalは、お客様のAI導入を支援し、経営幹部レベルへの戦略アドバイザーを務めるとともに、AIチームがAIの組み込みを成功できるように指揮してきました。

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