2021/12/22
by Adam Sawley / Doug Whiting

 

「百聞は一見にしかず」という古くからのことわざは、今日、特にデジタルトランスフォーメーションを推進中の企業にとって、これまで以上に重要な意味を持ちます。プロセスマイニングと可視化を通じて企業は重大なボトルネックなどを特定し、対策を講じることができるからです。

大量の業務データを可視化することで、データの理解は容易になります。そしてプロセスを可視化することで、傾向やパターン、関係性を簡単に表せるようになり、データから貴重なインサイトを引き出すことができます。

プロセスマイニングは、情報システムから知識を抽出し、抽出したデータをインサイトとアクションに変換することを目的とした手法です。プロセスマイニングで明らかになった情報は、企業の主要な業務プロセスを可視化し、成長戦略を実現するうえで大いに役立ちます 。

図 1. プロセスマイニングによる可視化マップの例

図1の例を見てください。図1はプロセスマイニングにより、受注、納品、請求のフローなどのプロセス間の相互関係が可視化されたマップです。この可視化マップは、様々なバリエーションの受注と請求、および納品との関係を表したスナップショットとなります。

ビジネストランスフォーメーションプロジェクトの最初の重要なステップは、業務プロセスを明確に把握することです。しかし、業務プロセスが進化すると、業務プロセスに関連するすべての手順、様々なタッチポイントや相互関係、およびプロセス間で行われるあらゆることを関係者が把握できているとは限りません。

可視化マップを作成することにより、業務プロセスのあらゆる逸脱、ボトルネック、非効率性だけでなく、驚くような複雑さも、スプレッドシート上の数値としてではなく、可視化された図で把握できます。このようにデータを可視化することでより強いインパクトが生み出され、企業はデータをビジネスケースに活用して、改善に向けた実際のアクションを実行しやすくなります。

 

プロセスマップの活用

プロセスマップ(プロセスマイニングにより作成された可視化マップ)は分析フローに基づいたものであり、運用効率の向上が必要な重点領域を特定することが可能です。成長戦略を実行する際、次のようにプロセスマップを活用することができます。

  • 現状把握の促進: 最初のステップとして、プロセスマップにより「現状」のプロセスがどのようなものかを迅速に把握します。目標は、プロセスの各ステップで発生している人件費などのコストを理解することです。これにより、実際にどのような作業が行われているのかを把握することができます。
  • ボトルネックの特定:基盤となるデータを見ると、たとえば、入金消込のための売掛金タスクで多くの手動作業が発生していることに気づくかもしれません。こうした状況を把握して明確に可視化することで、売掛金プロセスの一部を自動化するという経営判断に役立てることができます。
  • Fit to Standard活動への準備:プロセスマップは、企業の「Fit & Gap」活動、または「Fit to Standard」といった活動の展開に役立ちます。業務の標準プロセスを可視化し、標準的な方法でギャップを最小限に抑えるのです。
  • 業務改善タイミングの優先順位付け: プロセスマップを活用することで、変革が必要とされている領域をフォーカスし、デジタルトランスフォーメーション推進のタイミングに優先順位を付けることが可能になります。無駄や非効率なプロセスが存在する領域を特定し、最大の効果が得られる領域に対象を絞ることができるのです。

 

プロセスマップの導入

プロセスマップ作成の素晴らしい点は、業務プロセスとアプリケーションをテクノロジー部門と統合し、数多くの複雑なビジネス課題に対する解決策を見つけ出せることです。プロセスマップにより企業は改善点を確認できるだけでなく、これまでの投資に対する効果を測定することもできます。これはERP変革プロジェクトにおいて特に重要です。

DXCではSAPアプリケーションの一環として、プロセスマイニングマップと可視化を活用し、企業がS/4HANAへの移行などの変革を計画できるよう支援しています。DXCはデータを調査して、トランザクション、パフォーマンス、ユーザー、および受注処理などその他のパラメーターに関する情報を収集し、お客様のテクノロジー環境について事実に基づき詳細に評価するとともに、プロセスの改善を実現するための貴重なビジネスインテリジェンスを提供します。

ビジネスデータの収集とプロセスマイニングマップの作成をスムーズに行うためのツールは数多くあります。DXCはデータ分析に関する独自の知的財産を活用することに加えて、2021年初頭にSAPが買収したエンタープライズ業務プロセスインテリジェンスにおけるリーダーであるSignavioや、IBIS Process Spectrumなどのソフトウェアを利用しています。

プロセスマップのもう1つの重要なメリットとして、プロセスマイニングツールにより様々なアプリケーションを横断して情報を収集できることがあげられます。たとえば、Salesforce.comに見込み客の情報を入力してその後SAPで注文を処理する場合、プロセスマップはすべてのアプリケーション間で行われている処理をエンドツーエンド全体で表すことが可能です。

 

プロセスマイニングと可視化を活用してデジタルトランスフォーメーションを推進

プロセスマップを利用してS/4HANAなどのデジタルトランスフォーメーションを推進することは、20年間住んでいたあなたの家をリフォームするようなものだと考えてください。壁を壊し始めたら、あなたの家はどのような姿になるのでしょうか。ツールは、新たな増築をするための費用を正当化するためのビジネスケースを策定する上で、どのように役立つでしょうか。古い家をリフォームする場合と同じように、最終目標を達成するにはビジネスのビジョンに沿った新しい考え方が必要です。

プロセスマップをまだ利用していない場合は、導入するための計画立案やスキル、リソースが必要になります。しかし、ビジネス改善のロードマップとして役立つ図や視覚的な資料を提供するプロセスマイニングマップ導入への投資は、間違いなく価値があるものです。

 

About the author

Adam Sawley
DXC Technologyのオーストラリアおよびニュージーランド地域のSAPコンサルティングマネージャー

Doug Whiting
DXC TechnologyのSAP S/4HANAグローバルオファリングリーダー

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