優れたエクスペリエンスを従業員に提供するには、想像以上の困難が伴います。つい数年前までは、テクノロジーやITサービスに対する従業員の満足度を測定、向上させるための解決策として、エクスペリエンスレベルアグリーメント (XLA)が話題になっていました。しかし、多くの企業や組織では、XLAを最大限に活用するための技術力が不足していたのです。
しかし、従業員エクスペリエンスの測定について、検討を再開する好機がやってきました。今や、従業員が利用しているテクノロジーとそれらが従業員の業務に与える影響に関して、従業員の考えを的確に把握することは難しくありません。企業はこの好機を逃さずに、従業員エクスペリエンス管理 (XM) を最大限に活用する必要があります。特に、業界内で事業を継続し、市場での競争力を維持するには、最も貴重な資産である人材を維持することが大切です。つまり、従業員エクスペリエンス管理の活用は必須なのです。
ITに関する従業員エクスペリエンスの向上は、ITシステムの社内エンドユーザーや、企業のテクノロジーサービスを購入した外部企業の従業員の双方を満足させるために極めて重要です。The Josh Bersin Companyが実施した調査によると、適切な従業員エクスペリエンス戦略を推進している企業では、雇用した従業員を維持する可能性が5.1倍、効果的にイノベーションを起こす可能性が4.3倍、顧客を満足させる可能性が2.4倍高くなっています。
複数のソースからシームレスにユーザーのデータを収集し、パターンや傾向、急激な変化を定期的に測定することで、企業は貴重なインサイトを得て、従業員の満足度を高めるためのサービス改善に取り組むことができます。この課題にしっかりと取り組んでいる企業は、人々のエクスペリエンスの表現やテクノロジー資産の状態とパフォーマンスなどの関連情報を、日々の業務のサイクルやタイムラインに対応付けて収集しています。
今、必要なのは、エクスペリエンス管理へのアプローチを見直すことであり、このためには、エクスペリエンスを包括的に把握する必要があります。
新しいレベルのエクスペリエンス管理を推進
今、必要なのは、エクスペリエンス管理へのアプローチを見直すことであり、このためには、エクスペリエンスを包括的に把握する必要があります。
これはつまり、運用側が設定した指標を測定するだけでなく、その先についても考える必要があるということです。先進的なCIOは、エクスペリエンス管理を可能にし、従業員のエンゲージメント、生産性、イノベーションを最適化するには、エンドユーザーの主観的指標を追加で実装、導入する必要があることを認識しています。多くの企業は、指標と分析を活用することで、テクノロジーサービスを調整し、必要に応じてそれらのサービスを更新して、エンドユーザーのサポートを改善し、変化するビジネスニーズに対応できるようにしています。
最も重要なことは、データ主導かつ従業員中心の取り組みであり続けるということです。たとえば、DXC Technologyは大手管理医療組織と共同で、最前線の従業員に関する調査を実施しています。この調査は、従業員を職種別 (看護師、セラピストなど) に分類し、それぞれのグループで改善または提供が必要なITサービスに関する計画に役立てられています。DXCは、ユーザーエクスペリエンスに関するフィードバックをほぼリアルタイムに収集し、ニーズに応じてITサービスを進化させることで、同組織のエクスペリエンス管理の取り組みを支援しています。
別の医療サービス組織では、DXCの協力により従業員の職務に応じて文書を印刷する際の基準となるエクスペリエンスの指標を策定しています。これらの指標を分析することで、IT部門はすべてのユーザーが自身の職務で必要な印刷オプションに常にアクセスできるようにしています。DXCはこれらのユーザーからフィードバックを定期的に収集し、変化を実現するための仕組みを創出しています。
テクノロジーを活用して従業員エクスペリエンスを管理するこの新しいアプローチを推進するには、従業員を単一の集合として考えるのではなく、特定の職務グループに分類して考えることが重要です。たとえば、金融サービス組織には、融資を担当する従業員もいれば、投資を担当する従業員、さらには市場分析を担当する従業員もいます。各グループには固有のニーズがあり、テクノロジーとツール類をこれらのニーズに合わせる必要があります。
もちろん、従業員は部門や、職種、チームといった集団のメンバーであるだけでなく、仕事の仕方や好みがそれぞれ異なる個人でもあります。エクスペリエンス管理を進める企業では、従業員の感情を個人レベルでもモニタリングしています。
引き続き重要な客観的指標
誤解のないように言うと、客観的指標が重要であることに変わりありません。
たとえば、エクスペリエンス管理の一環として、エンドユーザーのPCやタブレット、その他のエンドポイントデバイスの稼働時間はモニタリングしておく必要があります。これらの情報があることで、システムのパフォーマンスがユーザーエクスペリエンス全般にどのような影響を与えるかを判断できます。同様に、ヘルプデスク担当者の行動がユーザーエクスペリエンスに与える影響を評価するには、サポートチケットの分類方法についても把握する必要があります。
もちろん、従業員のPCが稼働時間のSLAを満たしていたり、サポートへの電話が5秒以内につながっただけでは、ユーザーがITエクスペリエンスに完全に満足しているとは限りません。しかし、こうしたデータを感情データや従業員の認識、文化、態度に関するデータと組み合わせることで、行動を起こすための包括的なエビデンスが提供されます。
エクスペリエンス管理は、リアルタイムまたはできるだけリアルタイムに近い状態で実施することが理想的です。
リアルタイムでの理解を目指す
エクスペリエンス管理は、リアルタイムまたはできるだけリアルタイムに近い状態で実施することが理想的です。
これまで、従業員の満足度を測定する一般的な方法は、従来どおりの調査を実施することでした。しかし、このアプローチでは、エクスペリエンス管理が持続可能な状態にあるとは言えません。急速に変化し得る従業員の感情を測定するには、調査と分析では時間がかかりすぎるからです。
しかも、実際にIT部門が従業員の問題に対応するまでにはさらに時間がかかります。IT部門が新機能やサービスの更新によって効果的な変更を行う頃には、従業員にとってはすでに解決済みの事項になっているかもしれないのです。業務遂行のために従業員が独自の方法や解決策を見つけた場合、IT部門の成果はまったく利益をもたらさないことになります。
全体像の中には従来どおりの調査も含まれますが、組織にとって今後必要なのは、より迅速なアプローチも活用することです。
DXCのアプローチ
DXCはこの「迅速なアプローチ」を開発しました。私たちは、このアプローチを「調査ファースト」ではなく「質問ファースト」と呼んでいます。これにより、3種類の測定データセットの全体的な平均指標が得られます。このうちの2つは主観的なエクスペリエンスに関連し、もう1つは客観的な運用データに関連するものです。
この新しいアプローチによる従業員エクスペリエンス管理についてわかりやすいように、私たちはDXC Experience Cubeという手法を開発しました。これは、次のデータセットを測定する3次元の立方体型XMモデルです。
- 感情:特定のサービス (オンボーディング、リクエスト、問題解決など) について、従業員が個人的にどのように「感じているか」に関するデータ
- 認識:さまざまなニーズ別のグループに従業員を分類し、ビジネスサービスのさまざまな側面についてどのように「考えているか」に関するデータ (チームにとって重要なアプリケーションの中断に際して適切なタイミングで連絡があったかなどの指標を考慮)
- サービスのインプレッション:システムやソフトウェアから収集した技術的エビデンス (アクセスログやデバイスデータなど)
DXCのExperience Cubeは、これらのデータセットの全体的な平均指標を提供することにより、従業員エクスペリエンスの測定と、継続的改善のサポートに必要な新しいビジネス要件の測定の両方を大規模に実施できる追跡メカニズムとして機能します。
DXC Experience Cube の手法
DXC Experience Cubeは、新しいアプローチによる従業員エクスペリエンス管理を可能にする手法です。あらゆるサービスに関して従業員エクスペリエンスを測定するこの革新的なモデルにより、継続的なサービス改善の推進に必要なデータが得られます。
サービス
- オンサイトサポート
- デジタルファーストのサービスデスク
- セルフサービスITロッカー
測定対象のサービスの総合スコアは、従業員の感情、従業員の認識、サービスの指標に基づいて取得されます。次に、総合スコアを利用して、エクスペリエンスオクタントスケールでサービスの評価が決定されます。評価は、1が最高、8が最低です。
エクスペリエンスオクタントスケールによるサービスの評価は、Experience Cubeにマッピングされます。これにより、そのサービスに対する従業員エクスペリエンスを的確に把握できます。
DXC UPtimeTMエクスペリエンスプラットフォームによって、Experience Cubeで利用する感情、認識、サービスの印象に関するデータをユーザーから迅速に取得することができます。DXCにとって、調査とはリアルタイムに提示・回収できるダイナミックな質問の集積であり、サービス部門は、従業員がUPtimeに入力している間でも、サービスに関するユーザーのフィードバックに対応可能です。DXCは、QualtricsのEmployeeXM™エクスペリエンス管理プラットフォームをDXCのモダンワークプレイスソリューションに統合して活用することで、職場でのテクノロジーサービスのエクスペリエンスについて従業員がどのように感じているかを把握します。これにより、従業員に関する貴重なリアルタイムのインサイトが得られ、エンゲージメント、コラボレーション、生産性の向上が推進されます。
今後、DXCが指標の解析の精度を上げて継続的にワークプレイスサービスの改善に取り組むことで、ユーザーは直接フィードバックを提供する必要さえなくなるかもしれません。現状でもすでに、データサイエンティストはExperience Cubeの出力結果を活用して、これらの3種類のデータセットに対して詳細な分析を行うことができます。たとえば、これらのデータセットを調べることで、どのような新しいサービス機能が求められているか、それらを既存のサービスに追加することでメリットのあるユーザーの人数、需要のある場所などについての仮説をテストすることができます。
DXCは、エクスペリエンス管理に対するこの新しいアプローチに自信を持っており、このアプローチを自社に導入しました (DXCが積極的で生産的な従業員をどのように生み出しているかについて詳しくは「モダンワークプレイスで従業員に最高の体験を提供」 をお読みください)。
XMを成功させる
DXCは、デバイス管理からサポート、コラボレーションまでを含むすべてのワークプレイスサービスについて運用データとエクスペリエンスデータを収集、測定して、継続的に改善を推進する独自の能力を誇っており、市場において最高レベルのエクスペリエンス管理をグローバルに提供できるポジションを築いています。
DXCはエンタープライズサービスプロバイダーとして、お客様の複雑なIT資産を管理し、従業員のテクノロジー上のニーズをサポートしています。これも、私たちの大きな強みです。ほとんどのベンダーは他社が提供するコンポーネントに手を入れることはできませんが、DXCは中立的な立場でそれらのコンポーネントにアクセスし、複数のシステムを管理します。DXCは、Citrix、Microsoft、1Eを始めとするパートナーから重要な機能を取り入れつつ、Qualtricsとも協力して、エクスペリエンスを管理するための独自の複合ソリューションを提供しています。
たとえば、Microsoft Teamsで通話の品質が悪い場合、DXCは、企業のサービスデスクベンダーとして、またネットワークマネージャーとしてIT資産全体をサポートし、エクスペリエンス低下の原因が帯域幅の制限であることを特定して対処することが可能です。
DXCはまた、企業がエクスペリエンス管理の専門知識を習得するための支援もしています。DXCはすべてのお客様に従業員エクスペリエンスマネージャーを割り当て、エクスペリエンス管理のライフサイクル全体について説明します。
ワークプレイスエクスペリエンスの変革への道のりで、次の事項を実現するための知識とツールをお客様に提供します。
- 企業の状況と企業が提供するサービス・機能の定義
- 従業員とそのニーズのプロファイリング
- 職場に対する従業員の認識、文化、感情の把握
- 基本となる主観的なエクスペリエンスのデータと運用テクノロジーデータのExperience Cubeモデルへの適用
- これらの重要な統計の分析と維持
お客様はDXCの新しいアプローチを通じて、変革を促進し、サービスの継続的な進化を可能にし、自動化の機会を拡大することができます。DXCは、企業のチーフエクスペリエンスオフィサー (CXO) のオフィス設立も支援します。
過去数か月間、DXCは大手管理医療組織のお客様に対してエクスペリエンス管理コンサルティングを実施し、同組織のIT部門がXMの専門知識を高めるための支援をしてきました。同IT部門はこれまで主にテクノロジーの導入に重点を置いていましたが、DXCは従業員のプロファイリングの重要性を強調しました。これは、特定の個人やグループが必要とする種類のエクスペリエンスを提供するためです。現在、同IT部門は、個人とグループの要件に対応するために、ITサービスレベルをより詳細にモニタリングしています。
この取り組みの一環として、同IT部門はチャットボットを利用して従業員とヘルプデスクとの会話を分析しています。DXCは現在、同組織の仮想デスクトップインフラストラクチャ (VDI) のサービスパフォーマンスに関する技術的な運用指標の策定も開始しており、同IT部門が環境を最適化し、そのサービスを利用する従業員のさまざまなグループ内に存在するさまざまな需要を把握できるように支援しています。今後も、同組織はDXCと共同でエクスペリエンス主導のサポートプロセスを構築して、従業員エクスペリエンス指標を定常的に収集する予定です。
他の多くの企業も、素晴らしい従業員エクスペリエンスを生み出すために取り組みを始めようとしています。エクスペリエンス管理を向上させるための努力は、人間中心のIT環境の発展という成果として実を結びます。最適化されたデジタルサービス下で、従業員がテクノロジーに制限されることなく強化される環境を実現できるのです。
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