2021/12/08
by 小田 信之
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威から抜け出すための「切り札」と期待されているワクチン――新薬は通常10年・20年という開発期間を経て世に出ますが、新型コロナワクチンが異例の早さで投入されたことに驚かれた方は少なくないでしょう。開発スピードもさることながら、国による承認とワクチン接種開始までのリードタイムもまさに異例の短さです。
現在、日本で薬事承認・薬事承認申請されている新型コロナワクチンは、海外の製薬企業が開発したものです。日本国内では、それぞれの日本法人または提携企業を通じて供給されています。そして、供給元である日本の製薬企業には、医薬品の安全性に関する情報を日々収集・分析し、必要に応じて厚生労働省・医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告することが義務づけられています。
新型コロナワクチンには、海外で使用されている医薬品について日本国内の承認審査を短縮する「特例承認」が適用されました。これにより、通常2~3年を要する薬事承認申請から薬事承認までを大幅に短縮しています。接種が始まった現在も、効果の持続性を確認するための臨床試験が継続されています。
DXCテクノロジー・ジャパンが開発・提供するClinicalWorks(クリニカルワークス)/ADRは、複数の大手製薬企業に新型コロナワクチンの安全性情報管理とその関連業務を効率化・適正化する目的で採用され、新型コロナの脅威と戦う方々を支援しています。
急がれた安全性情報管理システムの整備
異例のスピードで開発・投入された新型コロナワクチンに対し、製薬企業各社は専用の安全性情報管理システムの整備を急がなければなりませんでした。パブリッククラウドとプライベートクラウドのどちらにも展開可能なClinicalWorks/ADRは、短期間での導入という要求にもしっかりとお応えしました。
ClinicalWorks/ADRは、安全性情報の収集から社内での評価、厚生労働省・PMDAへの報告、医療機関などへの情報提供に至るプロセス全体を網羅し、関連する業務の効率化・省力化に寄与します。特に当局への報告においては、規定に沿った書式・形式でのドキュメントを効率よく作成できます。日本のお客様の声を積極的に採り入れて進化してきたClinicalWorks/ADRならではの機能性は、数多くの製薬企業から高く評価されています。
新型コロナワクチンにおいては、臨床試験や接種後の健康調査など、収集・管理・検討しなければならない安全性情報は膨大な量となります。海外で確認された副反応や、これに対する規制当局の措置などの情報も、日本の当局に報告する義務があります。安全性情報管理に関連する業務負荷が急増する中、スピード感をもって要求に応えていくために、ClinicalWorks/ADRが果たすべき役割は重要です。
安全性情報管理とリモートワークの両立
ClinicalWorks/ADRは、オンプレミス環境やMicrosoft AzureのPaaSを活用したクラウドアプリケーションとして利用できるたけでなく、DXCが提供するSaaS(ClinicalWorks/ADR Cloud)としてもご利用いただけます。ドキュメント管理システムと連携して電子文書の原本性を確保しつつ、安全性情報管理に関わる業務プロセス全体のオンライン化にも貢献します。ClinicalWorks/ADRは、多くの紙文書を扱ってきた安全性情報管理部門の業務を変革し、リモートワークの推進基盤ともなるのです。
DXCテクノロジー・ジャパンは、グローバルITカンパニーとしての技術力・総合力を活かし、日本のお客様に寄り添いながらClinicalWorks/ADRの強化を進めてきました。新型コロナワクチンに関連する複数のご採用では、グローバル製薬企業の日本法人ならではの要件に合わせた機能開発に柔軟に対応できたことが高く評価されました。
DXCテクノロジーは、一日も早く新型コロナが制圧されることを願いながら、全社を挙げてテクノロジーの面から製薬企業のお客様の現場を支えてまいります。