2022/6/23
by 熊田 清志
コロナ禍におけるコミュニケーションの変化
コロナウイルスの影響で、リモートワークが広まり、従来とは異なるデジタル化・分散化された環境で働くことが多くなりました。コロナ後の社会においても、このような働き方が継続し、定着していくものと思われます。デジタル化という観点では、音声だけの電話によるコミュニケーションから、メール、チャット、ウェブ会議等によるコミュニケーションへの多様化が挙げられます。デジタルツールを介した機密情報のやりとりや、会議中のスクリーンショットの撮影や録音といった機会が増えていくでしょう。分散化という観点では、社員はリモートワークという孤立した環境で働くことで、上司等の周囲からの監視の目がなくなることで、作業効率が落ちたり、モラルの低下が発生したりする可能性があります。このように、今後のビジネス環境では、リモートワークを活用してより高い効率性を得られる利点があると同時に、コミュニケーションの多様化に伴う新しいリスクが生じていると考えられます。
コミュニケーション・モニタリングの必要性
コミュニケーションの多様化に加え、セクハラ、パワハラ、モラハラ、差別発言などの人権問題に対する意識の高まりや、コンプライアンス違反に対する社会の厳しい見方などを背景に、企業は新しいリスクに対応する必要が生じています。
また、海外で業務を行う企業では、地理的に離れていたり時差があったりするだけでなく、言語や文化の違いが要因となり、海外の業務状況・コミュニケーション状況を把握しずらいといった課題意識が以前よりあります。
このような状況を背景に、従来、モニタリングされることが少なかった音声やチャットなどのコミュニケーションのモニタリングの取り組みが始まっています。チャットは、社員の本音が出やすく、セクハラ、パワハラ、モラハラなどをモニタリングする上では、有効な監視対象と考えられます。また、単独のコミュニケーション・チャネルだけを対象とするのではなく、複数のコミュニケーション・チャネルのデータを集約してモニタリングし続けることで、その有効性を高めることができます。例えば、社内の人間だけではなく、社外の人間との共謀によるり実行される不正ケースも多く、社内と社外とのコミュニケーションの統合モニタリングは、有効な不正検知の方法と考えられます。
コミュニケーション・モニタリング実現における挑戦
不正検知という目的を達成するには、ランダム・サンプリングではなく、全量調査が必要です。従って、コミュニケーション・モニタリングの実現には、大量データを扱うシステムの利用が不可避です。システムの要素として、「データの収集」、「データの分析」に分けて考えましょう。
データの収集においては、音声データなどを含む、ビッグデータ・アーキテクチャーが必要です。メールやチャットなどのさまざまなシステムのデータ形式をすぐに取り込めるインターフェースの存在が必要です。
データの分析において重要なポイントは、検知精度です。単純なキーワード検知では、誤検知率の高いアラートを大量に発生させ、それに対応するために多数の専門家が必要になる場合があり、投資対効果の観点で課題が生じます。AIや機械学習を活用した高い検知精度のシステムが期待され、実際に利用され始めています。AIを利用することで、コンプライアンス違反そのままの事象を検知するだけでなく、「この件は、オフラインにしましょう」という不正を連想させるメッセージの検知も可能になります。
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